昨今は光回線が主流となりましたが、2000年代前半は電話回線を使ってインターネットに接続する通信サービスである「ADSL」がもてはやされていました。
実は、そのADSLが廃止されることが発表されています。
本記事では、ADSL廃止の話を中心に、代わりの回線として何を選べば良いのかといった点まで解説していきます。
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ADSLの廃止時期はいつなのか?
ADSLは、「Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)」の略称です。
私が子どもの頃は、「インターネットと言えばADSL」と合言葉のようにどこでもADSLが使われていましたが、光に取って代わられた現在に至っては利用者はそう多くありません。
隆盛を誇ったものは無くなっていくのが物事の道理と言いますが、ADSLはいつ廃止されるのでしょうか。
NTT東日本/西日本は2023年1月31日にADSLサービスの終了を発表
NTT東日本/西日本では、2023年1月末をもってADSLサービスを終了することを発表しています。
元々ADSLはベストエフォートで下り最大50Mbps/上り最大5Mbpsの通信速度が出るとされ、ISDNの64kbpsに比べてかなり速いことから急速に広がりました。
しかし、下り最大平均1Gbpsの光回線が2000年代半ばに導入されると、回線の切り替えがぐっと進みます。
光回線の契約者数がDSL(ADSLはDSLの一つ)契約者数を2007年に初めて上回って(※)から16年、ついにサービス廃止となりました。
(※ 総務省「平成20年通信利用動向調査」p5より)
Yahoo!BB ADSLも2024年3月末にサービス終了
パソコンはデジタル信号を、電話回線はアナログ信号を使うため、既存の電話回線を使うADSLではデジタルとアナログの信号を変換するために通信モデムという機器が必要でした。
この機器を店頭などで無料配布することで加入者が一気に増えたのがYahoo!BBのADSLサービスです。
2003年には26Mbps、2004年には45Mbpsの下り最大速度での通信サービスを開始し、IP電話加入者同士なら時間や距離に関係なく通話が無料になる「BBフォン」サービスとの相乗効果もあり多くの人が利用していました。
ただ、光回線への市場の変化などを理由に、こちらもすでに2024年3月末でのADSLサービス終了が発表されており、2020年3月からは一部地域より順次終了としています。
(参考:ソフトバンク公式HP「ADSLサービスの提供終了について」)
光回線に対応していない田舎や山間の地域は引き続きADSLを使える
ADSL廃止と言われても、今後も自宅でブロードバンドが使えるのか不安になりますよね。
光回線を使っている人は、大丈夫です。
問題は、ADSLを使っている人が今後どのように対応したら良いかですよね。
判断の基準は、「地域が光のサービス提供エリアに対応しているかどうか」になります。
- 光回線に対応していない地域
→今後も引き続きADSLを使える - 光回線に対応している地域
→光回線などへの切り替えが必要
ADSL廃止と言っても、完全にサービスを終了するわけではなく、自宅が光回線に対応していない地域であれば、今後も引き続き使うことができます。
ただ、光のサービス提供エリアに対応している地域はサービス終了地域となるため、光回線(FTTH)やケーブル(CATV)などへの切り替えが必要になるでしょう。
フレッツ光を提供するNTT東日本/西日本のサービス提供エリアの確認は、下記よりご確認ください。
(参考:NTT東日本「フレッツ光提供エリア」、NTT西日本「フレッツ光ネクストサービス提供エリア」)
光回線とは?分かりやすく図解で解説!!WiFiの工事や光電話についてもまとめて紹介
ADSL廃止を決めたのはなぜ?
ADSL利用者が減ったのは、使っている私たちが一番実感していることですが、各通信事業者はなぜADSLの廃止を決めてしまったんでしょうか。
ブロードバンド利用者の多くが光回線の契約になったから
(引用:総務省『情報通信白書』「FTTHとDSLの契約純増数の推移(対前四半期末)」より)
光回線(FTTH-緑色)とDSL回線(ADSLを含む-黄色)の契約純増数の推移を見ると、DSLの減少に対して光回線の増加が見て取れます。
契約数の推移を見ても一目瞭然で、2018年度末には光回線がADSLの17倍の契約数となっていることからも、通信事業者がサービスを終了して光回線に傾注する意味がよく分かりますね。
ADSLは光回線への「繋ぎ」としての役目を終えたから
フレッツやYahoo!BBのADSLサービス開始に合わせて、インターネット利用者がぐんと増えました。(上図)
私も、2000年代前半辺りから学校の授業でパソコンを使って調べる時間が増え、子どもながらにしてインターネットを身近に感じたのを覚えています。
既存の電話回線を使ってインターネットに接続できる技術は、誰もが気軽にネットを使える社会を短期間でつくることに貢献しました。
ただ、2004年末にはNTTから光回線サービスが提供され、「固定回線の契約数全体に占める光回線の割合」が78.1%に達していることからも、ADSLは次世代通信への「繋ぎ」としての役目を終えたと言えます。
(参考:総務省「電気通信市場の分析結果・ 新たな基本方針について」)
保守物品が枯渇するから
事業者は光回線普及に伴って「ADSLの関連物品が製造終了し、保守物品が枯渇する」ことをサービス終了理由の一つとして挙げています。
主要な通信が光回線となってくると、契約者数が増えないADSLの部品を生産し続けるのはコストに見合いません。
メンテナンスできないとなれば、事業者側としてもサービスを提供し続けることは難しいです。
ADSLから光回線やポケットWifiへの乗り換え手続きをしよう
フレッツやyahoo!BBのADSLサービス終了の対象地域に該当していて、これから光回線などに切替えるという人もいるでしょう。
引っ越しがあって工事をしたくない、速い速度で通信したいなど、人によってニーズは異なります。
せっかくなら、自分に合った通信方法を選びたいですよね。
そこで今回は、ADSLから光回線に乗り換える場合と、固定通信をやめてポケットWifiにする場合の注意点をそれぞれ解説していきます。
ADSLから光回線へ乗り換えるときの注意点
ADSL利用者が光回線への手続きをできるように、通信事業者の各サイトに案内が出ています。
すぐに乗り換え手続きをしてしまう前に、気を付けたいことを確認しておきましょう。
工事費無料期間を逃すと、乗り換えには工事費が掛かる
ADSLは固定電話の電話回線を使用していたため、光回線に切り替えるとなると当然回線を交換する必要が出てきます。
光回線を自宅に引き込む工事は、大掛かりで費用も掛かりそうですよね。
ただし、工事費が無料キャンペーンを行っているところは多く、さらにキャッシュバックも貰えるのでしっかり選べば実質負担はなくてすみます。
NTTの「フレッツ・ADSL」と「Yahoo!BB ADSL」に分けて見ていきましょう。
「フレッツ・ADSL」から「フレッツ光」へ乗り換えで工事費用無料
NTT東日本/西日本では、「フレッツ・ADSL」の利用者が2019年6月1日から9月30日の間に「フレッツ光」の利用を申し込み、2019年12月31日の開通期限までに開通した場合、工事費用の割引を実施しています。
期間内に切替えを行えば以下の料金が無料となります。
- 基本工事費
- 交換機等工事費
- 回線終端装置工事費
- 屋内配線工事費
- インターネット接続設定
- Wi-Fi設定
光回線の工事は、依頼してから数週間掛かることもあるので、切替が終わっていない人はできるだけ早めに申し込みと工事を済ませておきたいですね。
(参考:NTT東日本「一部サービスをご利用中のお客さまへ」、NTT西日本「移行工事費割引」)
Yahoo!BB ADSLから「ソフトバンク光」へ乗り換えると工事費用無料
Yahoo!BB ADSLを使っていた人も、「ソフトバンク光」へ乗り換えることで工事費が無料(※)になるキャンペーンを実施中です。
(※ 基本工事費、交通機等工事費、回線終端装置工事費、屋内配線工事費、機器工事費)
こちらは期間の定めが記載されておらず、キャンペーンが急に終了してしまう可能性もああるので、利用したい人は早めに申し込みましょう。
ちなみに、ソフトバンク光というのは、光コラボの一つです。
光コラボとは、フレッツの光回線の一部を卸してもらったプロバイダ(この場合はソフトバンク)が自社のサービスを付与して光の固定通信サービス提供するというもの。
Yahoo!BB ADSLからソフトバンク光に乗り換えることで、Yahoo!BBのプロバイダはそのままに光回線が使えます。
さらにプロバイダが継続できるため、「BBフォン(050で始まる番号)」や「ybb.be.jpのメールアドレス」などのサービスもそのまま利用することができるので、乗り換えも安心です。
他の回線に乗り換えでも工事費用負担なしで可能
いくつかの光回線では工事費用負担キャンペーン、キャッシュバックキャンペーンを行っている為、工事費用の実質負担額は0円となる場合があります。
工事費用のキャンペーン等は下記記事から確認できます。
光回線+プロバイダか、光コラボかは、料金やスマホとのセット割が決め手に
NTT東西のフレッツ光サービスと、フレッツ光の回線を使った光コラボサービスでは、同じNTTの光回線を使っているので速度自体は変わりません。
ただ、光コラボを契約することでコラボ先の電気代やスマホ代の割引ができるといったサービスがあることからも、料金重視で光コラボを選ぶ人が増えてきています。
光コラボの対象事業者は何百とあるので、どこを利用したら良いのか正直悩んでしまいますよね。
フレッツ光と、光コラボそれぞれの特徴を見ていきましょう。
フレッツ光
「光通信を使った固定回線サービス=フレッツ光」と思っている人が多いくらい、光回線サービスとして浸透しています。
使っている人が多い分、夜や週末など回線が混雑する時間帯になると、速度が遅くなることが多いです。
一定数のプロバイダから選ぶことができますが、NTT東日本/西日本とプロバイダ両方と契約する必要があり、料金が割高になったり、工事や手続きが煩雑だったりといったデメリットがあります。
ソフトバンク光(光コラボ)
ソフトバンクユーザーは、自宅の固定回線をソフトバンク光にすることでスマホ代を永年毎月最大1,100円引きにすることができます。
プロバイダはYahoo!BBのみであるため、プロバイダサービスのメールアドレスが使えなくなるのが困る人は、乗り換え前のプロバイダが使えるコラボ先を探しましょう。
ドコモ光(光コラボ)
ドコモユーザーは、自宅の固定回線をドコモ光にすることで、スマホ代が毎月最大1,100円引きにすることができます。
dポイントのキャッシュバックやポイントプレゼントがあるので、dポイント重視の方にもおすすめです。
So-net光プラス(au、格安スマホユーザー向け)
キャッシュバックはないものの、月額料金が他社に比べてかなり安くなっているのがSo-net光プラス。
auスマホユーザーであれば、スマホ代がプランによって550円から1,100円割引されます。
3年目以降は料金が高くなってしまうのがネックですが、キャッシュバックの貰い忘れといった心配もなく、総額で考えてもキャッシュバックをたくさん貰える他社と遜色ありません。
セット割を考慮する必要がない格安スマホユーザーにとって、最もおすすめだと言えるでしょう。
ADSLからポケットWifiへ乗り換えるときの注意点
これまで固定通信を使っていたけれど、電話は携帯で十分対応できるし、工事も嫌だな。
そこまで光回線の必要性を感じないという方は、光回線の切り替え工事をせずにポケットWifiに乗り換えるという手があります。
ポケットWifiならADSLよりも速度が速いことが多く、どこにでも持ち歩けるので、光回線への切り替え工事無料期間に間に合わなかった方や、工事が要らないと感じている方におすすめです。
ADSLからポケットWifiに乗り換えるとなるとイメージが沸きにくいと思います。
いくつか注意点を抑えていきましょう。
ping値を求める人はポケットWifiよりも光回線へ
ポケットWifiは、最新端末であれば下り最大1Gbpsを超えるような速度が出る端末が発売されています。
光回線は平均1Gbpsなので、ベストエフォートではポケットWifiも光回線も速度はさほど変わりません。
しかし、ポケットWifiは通信方式が無線であることから、有線で手元まで届く固定回線に速度が劣ってしまうことが多いです。
光回線とポケットWifiではオンラインゲームにとって重要なping値も変わってくるため、応答速度が求められる対戦ゲームを頻繁にするという方は光回線を選んだほうが良いでしょう。
引っ越しが多い、一人暮らしなら固定回線よりもポケットWifiを選ぼう
仕事や家族の都合で引っ越しが多い人は、引っ越しのたびに回線の手続きをするのが面倒ですよね。
一人暮らしで自宅やアパートに光回線工事をするとなれば、大家さんの許可を取ったり、工事費用が掛かったりして思ったよりも大変という話も聞きます。
ポケットWifiなら、引っ越しても住所変更だけで済むので移動中にスマホで手続きすることも可能です。
ADSL終了が近くなるにつれ利用者の乗り換えに向けた争奪戦が始まる
フレッツのADSLサービスが終了が近くなる2022年末から2023年1月、Yahoo!BB ADSLサービスが終了する2024年3月末が近づくにつれて、150万件近いDSL利用者の乗り換えに向けた争奪が始まることが予想されます。
光コラボなどに関する悪質な勧誘や詐欺なども増えてきていることから、ADSL利用者は「あいまいな返事はしない」「一人で判断せず家族に同席してもらう」などの対応取り、適切な移行先と契約するようにしましょう。